実は先日から、あきぞうの顎にはでっかいガーゼが貼られている。駅の階段で転んで、顎がパックリ割れる流血沙汰になってしまったせいだ。ダラダラ流れる血を見た時は、本当にこちらの血の気まで引いていくようで、取り乱してしまったが、その夜のうちに何とか血も止まったので、病院に行くまでもないかと判断して家で手当てしている。ちなみに救急箱を出すと、つねぞうがチャッと横に控えて助手になってくれる。血を見ても怯えず、ガーゼとカット綿も正しく区別できる彼女は、今では夫よりも怪我の手当てにおいて頼りになる。
そんな訳で、顎のガーゼが何とも痛々しかったあきぞうだが、本日迎えに行くと、先生に抱えられて玄関に出てきた。「あきくん、痒かったのかお鼻を指でいじってて、鼻血が出ちゃったんですよ。両方の鼻から」見ると、確かに鼻が赤くなっている。
「もー、あんたはどれだけ顔を傷だらけにすれば気が済むの!」「ごめんなしゃぃ・・・」とその場は殊勝に謝ったあきぞうだが、帰り道にお友達との競走にヒートアップし、駅地下通路の階段から見事に転げ落ちる、ということをやってのけた。まるでボーリングのピンのように見事に転がり、最後には壁に跳ね返って止まったあきぞうの姿に、こちらとしてはもう言葉も無い。
「だから、転ぶから走らないでって言ったでしょう!」「うぅ・・・ごめんなしゃぃ、もうしない・・・」しかしその後も、こちらの隙をついて道端のガードレールによじ登り、挙句そこから転落してみせるあきぞう。お前に学習能力は無いのかー!!と怒りたくなるが、さすがに本人も感じるところがあったのか、「い、痛い・・・だけど、ぼくが悪いからぼく泣かない・・・」と自分に言い聞かせている。潔いっちゃ潔いが、頼むからコケる前に自重してくれ。何とも言えない気分になる私に、「ハハハ! 元気がいいねぇ! 男の子は元気がイチバン! お母さんも大変だねぇ!!」と、道行くおじさんが声援を送ってくれた。確かに元気なのは良いことですけれど、もう少しお頭の方も、というか、学習能力をつけてくれないものでしょうか・・・これで顔面の傷が、全部で7箇所になってしまいました(ため息)。